【読書】定性データ分析入門

 ユーザーの行動からニーズや問題点を見つけ出すために、フィールドノートを作成して定性調査を行うことがある。人類学の専門家のように何ヶ月も(時には何年も)調査を続けるようなことはないけれど、それでも集まる資料は会話を書き起こした文章以外も写真やビデオなど、結構な量になる。

 じっくりと時間をかけて、それらの資料を吟味する時間はとれないので早い段階からソフト的に処理できないかと考えていた。フィールドワークの入門書として手に取った佐藤氏の本にも、資料に関する同様の問題が記述されていたこともあって、整理法に興味を持つようになったのがきっかけだ。

 「フィールドワーク」の中で分析ツールとして紹介されていたのは、ShareWareの「IdeaTree」だった。まずはこのソフトを使うことからはじめた。一時期PDAのシグマリオン2を使っていたのだが、IdeaTreeにはPC用と互換性のあるWindowsCEで動作するバージョンがあり、外出先で記録したノートをPCで再編集するなど、便利に使っていた。

 その後、もっと自由度が高いソフトを探しているうちに発見したのが「IdeaFragment2」だ。こちらはKJ法のようにカードを並べて一覧にすることが出来るので、より自由な発想ができる。残念ながら開発を終了してしまったのだが、十分な完成度なので今でもお勧めのソフトの1つである。

 最近発刊になった「定性データ分析入門」では、QDA(Qualtative Data Analysis)ソフトと呼ばれる質的データを解析するための専用ソフトが3種紹介されている。日本では殆ど知られていないQDAソフトを紹介するという点で、本書は十分価値があるがそれ以上に素晴らしい点は、ソフトで解析する元になるデータの扱いについて慎重に取り扱っている点だ。

 定量調査に比べて定性調査は、ともすれば科学的な研究とは見なされない場合が多い。私の関わる分野として特に大きいのは障害に関わる領域のフィールド調査では、同じレベルの障害を持っていても、その他の条件が全く異なっている場合が多く、定量的な比較など出来ない事がほとんどだ。そのため調査は必然的に定性調査になる。社会科学の分野では問題なく受け入れられる手法だが、工学の分野では未だに受け入れられにくいのが現状だ。その現状を乗り越えていくためにも、よりよい報告書を作っていく必要がある。

 

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2件のコメント

  1. 学術的な意味のためには、ここで紹介されている、ATLAS-TIを使うのがお勧めです。
    質的調査の品質と信頼性のために、このツールを使いましたよ、というのを記述すのが、海外の論文ではよく見ます。
    あとは、私もよくつかうのが、M-GTAですね。これはツールというより分析手法ですが。

  2. 安藤@総研大さん、コメントありがとうございます。
    M-GTAはModified grounded theory Aproachのことですね。
    この分野、最近IntelやNokiaが力を入れてきているので、どんどん新しいメソドロジーが出てきますね。
    NokiaのJan Chipchaseが調べているような携帯電話のエスノグラフィは面白いですね。彼のBlogが面白いですよ。
    http://www.janchipchase.com/

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