【漫画】どんぐりの家 それから

 随分前に描かれた漫画「どんぐりの家」。聴覚障害者の働く場所が作られるまでの日々を丁寧に追ったドキュメンタリータッチの作品。読むとじーんと来て搾り取られるように涙が出る良作でした。

 物語が完結してからの10年。今も聴覚障害者が置かれた立場は厳しいものがある。社会的な理解は進んだが、それがそのまま彼らの置かれている立場の改善に結びついたかは正直疑問だ。

 特に2006年に施行された障害者自立支援法の影響は大きい。 「どんぐりの家 それから」の中でも、自立支援法の影響で折角働けるようになった作業所を止めざるをえなくなった人達の姿が描かれているが、その苦悩はあまりにも深い。

 自立支援法を、作者の山本おさむは「美しい名前を持つ法律」と呼ぶ。そう、文字通りに障害のある人の自立を支援するための法律であれば、なんと素晴らしいことだったろう。だが実態は、この作品を読んでもらえれば、いかに残酷な法律であるかが分かってもらえると思う。

 私には政府が示す「自立」とは、責任を個人に押しつけている事のように見える。障害者から補助金を取り上げれば、補助金依存体質を改め自ら働こうとするだろう、というのが今の自立支援法の考えだろう。しかし、生活するための最低限のサービスまで取り上げることや、働くための訓練教育の機会までも奪ってしまっては、誰も立ち上げることはできなくなってしまう。

 自立支援法が、本当の意味で自立を支援する法律であるならば、障害者から取り上げたお金を障害者のために使って欲しい。