投票とアクセシビリティ

本日は衆院選の投票日ということで、さっそく投票所へ行ってきました。

投票所は近所の小学校の体育館が使われており、特段にアクセシビリティには配慮されてません。本来ではこのような人が集まる場所では段差などは配慮して欲しいですね。

建築物に対するアクセシビリティを求める法律の「ハートビル法」では、改正された時にようやく特定建築物として学校が追加されました。それでも特定建築物は義務ではなく努力義務なので拘束力のないものです。

昨年アメリカの選挙のことを少し調べたのですが、選挙をとても大事にしている印象を受けました。もちろん投票所のアクセシビリティにかんしてもADA法の中で決められてます。また、2000年の大統領選で集票時に起きたトラブルから電子投票機の乗り換えが進んでいた時期でした。これらの電子投票機には、もちろん視覚に障害がある人や肢体不自由などの障害を持つ人たちにも配慮することが求められていました。

そのときの調査は大統領選の前に終わってしまったのですが、その後の様子を見てみると電子投票機のトラブルが多くあったようです。動かなかったり、住民の数より多く票が入っていたり・・・。大統領選が終わって当時の投票をまとめた資料が出揃ってきたので、この問題も一度振り返ってまとめたいですね(時間があれば)。

日本でも鯖江市などで実験的に電子投票が行われた事があったのですが、コスト高などが理由で今では中止になったらしいです。他の市町村ではどうなんでしょうか?

 

JIS規格(X8341)の解説講座

9月15日に藤沢の慶応大学で開催されるヒューマンインターフェース学会の中で、JIS規格の解説講座が開かれる予定です。岡本先生や山田先生らと並んで、私は10月末に公開予定の電気通信機器に関する解説を行います。

電気通信機器のJISの正式名称は「JIS X8341-X:2005 高齢者・障害者配慮 設計指針?情報通信機器における機器、 ソフトウェア及びサービス 第4部:電気通信機器」 で、X8341シリーズの兄弟です。

この規格に関する詳しい解説は、本邦初になるでしょう。特に進歩の著しい携帯電話もその対象の1つに数えられていますので、注目度は高いですね。それだけに誤解や間違いがないように解説しなければならないです。

まだ席に余裕があるようですので、興味がある方はぜひご参加ください。

http://www.his.gr.jp/his2005/kousyuu.html#1

教員会議に参加

 今日は今秋から週1で講義を受け持つ大学での教員会議に参加してきた。

 まだ大学は夏休みということでキャンパス(とは言えビルの1フロアー)はひっそりとしていて、以前来たときのような賑わいはなかったものの、デザイン系の大学なので学生たちの授業課題などが並んでいて、段々と学校らしくなってきた。

 この大学は実践的な教育が特徴なので、職員の方々は私を含めて皆さん現役の企業人。忙しい人ばかりなので教員会議もお昼を食べながらのランチミーティングスタイルです。

 前期の学生たちの状況を聞く限り、学校に対する学生たちの満足度はかなり高いようで、後期を受け持つ身としては身が引き締まる思いだ。僕のユニバーサルデザインの授業は18時から始まるかなり遅い時間なのだが、50名以上の学生が履修希望を出してくれている。予定の30名を遙かに超えた応募だったので、少し選考しようかとも思ったが、結局全員受け入れることにした後半はワークショップ形式で授業を実施するつもりだったが、一人でこの人数をコントロールできないので、やり方を少し変えないといけないなぁ。場合によってはアシスタントを入れることも考えなければいけない。

 でも、学生達は間違いなくこの業界の次の世代を担う人材なので彼らに対する責任というものをすごく重く感じる。彼ら一人一人がそれぞれの領域でユニバーサルデザインを実践できるようになるように、出来るだけ多くのことを教えたいと思う。

【記事】スラッシュドット ジャパン | 文字を読むための脳の働きは表音、表意で異なる

スラッシュドット ジャパン | 文字を読むための脳の働きは表音、表意で異なる
表音文字と表意文字の問題はWebアクセシビリティとも深いところで通じています。
脳のレベルで違いがあるとはね・・・。
日本人と外国人では、虫の音を聞いたときの脳波の反応が違うという話を聞いたことがあるけれど、それとどこか同じところがあるのかもしれない。

学習障害の人に便利なテクノロジーの紹介

本日は、講師をしてきました。
お題は「学習障害をサポートするテクノロジー」です。

学習障害とは日本では最近になってようやく知られるようになった障害です。どのような問題があるかは個別に異なるのですが、知的障害とは異なって、文字の読み書きだけが困難だったり、計算だけが出来ないなど。一部の能力に発達の遅れなどが見られる障害です。

この中でも、特に文字の読み書きに困難を感じる人をDyslexia(難読症)といいます。有名人では俳優のトム・クルーズがカミングアウトしています。

今回はDyslexiaを支援するNPO法人EDGEが主催する全14回のセミナーのうちの1コマをいただき、このような障害を持つ人にとって便利なテクノロジーについて講義をしてきました。

NPO法人EDGE http://www.npo-edge.jp/

参加者はこの講習後ティーチング・アシスタントとして、現場でDyslexiaの人たちを支援するため、出来るだけ実践的な内容を心がけて説明してきました。取り上げたテクノロジーもローテクから始まり、ハイテクであっても入手しやすいものを中心にしてきました。アメリカやイギリスなどにはよい製品があるのですが、言語の問題などで利用できないものも多く、これらは参考程度の紹介にとどめました。

どんな内容だったかはスライドの見出しを書いておきます。興味のある方はお問い合わせください。

  1. テクノロジーを使えばハッピー?
    • 特殊なテクノロジーの利用には、抵抗を感じる人がいる
    • 出来ないことを受け入れているようで、プライドが傷つくことがある
  2. テクノロジーを使うと成長しない?
    • 特定の能力を補うことにより、「二次的情緒障害」を防ぐ
    • テクノロジーを使うことで、成長が刺激されることがある
  3. 代表的なLDの抱える問題
    • 記憶することがむずかしい
    • 時間管理がむずかしい
    • 考えをまとめることがむずかしい
    • 文字を読むことがむずかしい
    • 文字を書くことがむずかしい
    • 計算することがむずかしい
  4. 記憶をサポートする道具
    • メモ/ポストイット
    • ICレコーダー
    • デジタルカメラ
  5. 時間管理をサポートする道具
    • スケジュール
      • カレンダー
      • 携帯電話のスケジュール帳
    • タスク
      • メモ
      • ポストイット
    • 時間を目で見る
      • キッチンタイマー
      • 砂時計
      • タイム・ログ
  6. PDA・携帯電話
    • 海外で主流のスマート・キーボードやPDAは日本では普及していない
    • 携帯電話のスケジュール帳やアラームを活用する
  7. 考えをまとめることをサポートする道具
    • 蛍光ペン/テープ
    • マインドマップ
    • アイデアプロセッサー
  8. 印刷物を読むことをサポートする道具
    • 拡大コピー
    • ルーラー定規(読みのため)
    • よい照明(明るさ・反射)
    • 電子辞書
    • OCR(Optical Character Recognition )
  9. 画面を読むことをサポートする道具
    • テキスト読み上げソフト
  10. 文字の入力をサポートする道具1
    • ペングリップ
    • 正しいタイピングスキル
    • 携帯電話型キーボード
  11. 文字の入力をサポートする道具2
    • 単語予測入力
    • 漢字練習ソフト  「LD児のためのひらがな・漢字支援」
  12. 算数・計算をサポートする道具
    • 電卓
    • 音声電卓
    • 電子ワークシート
      • Web上に公開されているものなどを利用すると良い
      • パワーポイントなどを使った自作教材
  13. パソコンの工夫(Windows)
    • ユーザー補助 コントロールパネルから設定
    • Wordのスペルチェックと文章構成機能
    • IME(日本語入力ソフト)の学習機能を活用する
  14. まとめ
    • 利用する人の個々の特性を理解してから、導入を検討すること(あくまで人が優先)
    • テクノロジーの限界を理解すること(テクノロジーに過度に依存しないこと)
    • ローテク/ハイテクの利点を活かすこと