【読書】わが指のオーケストラ

 「遙かなる甲子園」に続き、山本おさむの「わが指のオーケストラ」を読了。口話主義が台頭する日本の聾教育界の中で、ただ一つ手話を守った大阪市立聾唖学校の校長、高橋潔を主人公にしたマンガです。日本の聾教育の歴史がよく分かります。

 高橋潔の言葉で最も感動した場面は、彼の全国聾唖学校公聴会総会でのスピーチです。

「口話に適する者には口話法にて適しない者には手話法にて」
「ひとりの落ちこぼれもない教育…いわゆる適正教育を最もよしと信じるのであります!!」
第4巻P143より

 他の学校が口話教育に傾く中で、たった1人手話教育の重要性を訴える姿に感動しました。潔の考える適正教育は、いまのインクルージョン教育にも通じるものだと思います。

 しかし世間は口話教育を選び、その結果いまでも聾学校では口話教育が主流で、手話はあまり認められていないままです。口話が出来ると健聴者とのコミュニケーションは円滑になりますが、習得することはとても難しく誰もが身に付けられるものではないそうです。その結果、学校の授業が口話法を身に付けるために割かれてしまい、他の教科の勉強が遅れてしまうという問題があります。

 口話がいいか手話がいいか、答えは一つではありません。その人に適した教育が受けられるようにすることが大事なのだと、改めて感じました。

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5 ろう文化の全てがわかる!

【記事】インテル、シニア世代にやさしい PC ライフの環境構築に向けて技術要件を策定

インテル、シニア世代にやさしい PC ライフの環境構築に向けて技術要件を策定

  以前からintel research lab.では高齢者向けのPCの研究が進められていることが漏れ伝わってはいたが、まさかこれがその成果ってわけじゃなかろうな?

 ニュースじゃ細かい技術要件が分からないので、なんともコメントしにくいが、少なくとも非常に現実的なプロジェクトな印象です。研究所のイメージビデオとかが近未来っぽいので、それを期待してみると、アレレって感じですね。こんなのを期待していたのだけれど・・・。intelがスポンサーで研究していたCASTのような内容だと思ったのに。

 シニア向けのコンピューターと言えば、むかしIBMがライコスとやっていたITryプロジェクトを思い出しますね。あのときの研究成果は「らくらくWeb散策」にも利用されていると聞いたことがあります。

 シニア向けパソコンというのは、これら意外にも昔から様々なアイデアや取り組みがあるのですが、いまひとつ決め手に欠けますね。 次は私のアイデアを少し書いてみます。

【記事】asahi.com:手話で勧誘商法 5000人30億円被害? 2社を捜索 – 社会

asahi.com:手話で勧誘商法 5000人30億円被害? 2社を捜索 – 社会

 以前、聴覚障害者をターゲットにした詐欺のグループの記事を紹介したが、また似たような事件が起こってしまいました。

手話を使うなどして「事業会員になれば年間9億円にのぼる利益を分配する。毎月8万円の配当がある」「知人や友人に紹介して会員にすれば7万5000円」などと誘い、1セット約53万円のCD―ROMなどを買わせ、クーリングオフの記載が不十分な契約書を渡した疑い。

 手話が出来る営業マンの話しは、手話の出来ない営業マンよりも信じやすいという、聴覚障害者の心理を巧みに利用した勧誘方法です。また、聴覚障害者にはデフコミュニティと呼ばれるような独特のネットワークがあり、その強い繋がりを利用して、次から次へ関係者を誘い込む悪質な手口の犯罪です。

 コミュニケーションに障害をもつ人に対する弱みを悪用した犯罪は絶対に許せません。

【記事】低調なシニア向けケータイ

Japan.internet.com デイリーリサーチ – 低調なシニア向けケータイ、40歳以上で5%未満

  なんだかこの記事を読むと、シニア向け携帯がまったく売れていない印象を受けますね。ドコモのらくらくホンに限って言えば、シリーズ累計の出荷台数が1,000万台を超えているので低調とはいいがたいと思いますが…。

 確かにらくらくホン以外のシニア向け携帯は好調とは言えない状況にありますが、この報告の調査方法にも大きな問題があるように思います。まず、調査対象者の年齢ですが、次のように40代、50代だけで8割を占めています。

年齢別では、40代53.3%、50代27.9%、60代14.5%、70歳以上4.2%。

 また、登録モニターを使っているので、自らモニターに登録する積極的な人ですね。

 調査の手法もネットを使った回答だということなので、回答者はインターネットを操作できるITリテラシーの高い人です。

 この時点で回答者にかなりのバイアスがかかっていることが分かると思います。

意外にユーザーを獲得できていないシニア向けケータイだが、何が余計で、何が足りない機能なのだろうか。

 そんな問題を投げかける前に、自分たちの調査で何が余計で、何が足りないのかを考えて欲しいですね。

【読書】カーニヴァル化する社会

 TBSラジオで月に一度、日曜の深夜に放送されるラジオ番組「Life」。久しぶりに夜更かししても聞きたい番組が登場して嬉しい。朝まで生テレビ!のように毎回テーマを決めて、個性溢れるパーソナリティがトークを交わすのだが、朝生のように過激な内容ではなく、放課後の部室で友達と語り合ったような、ある種の懐かしささえ感じさせるトーンで進行していく。(ただし夜も更けていくとオヤジ発言が増えていく…)

 番組をもっと楽しもうと思い、メインパーソナリティーの鈴木謙介氏の著作「カーニヴァル化する社会」を読んでみた。タイトルから見てカーニヴァル化とはローマの「パンとサーカス」のサーカスにあたるものかと予測して読み始めたが、かなり違うようだ。サーカスが為政者から市民に対して与えられる上意下達的なものであるのに対して、ここでのカーニヴァルとは市民が自ら欲して作り上げていくものだと思う。

 本書の中でカーニヴァル化の具体例として「祭り」を引いている。これは伝統的な祭りではなく、2ちゃんねるなどで起きる突発オフなどの熱狂的な集団行動を指している。この祭りのメカニズムとその背景にある若者の心理を解こうというのが本書の試みである。 その要因とは、社会的なプレッシャーの増大によって鬱になりがちな気分を、祭りによって自らを持ち上げているのだという。これに加えて背景にITの進歩によりスマートモブのようなネットワーク化があるだろう。小さな種火も、ネットワークで増幅されて祭りの規模を以前よりも拡大することになっているのだと思う。

 面白いのはこの後に出てくる「ネタ消費」という概念である。「消費社会」から「記号社会」へと進み、モノそのものの価消費からモノに付随するブランドのような記号的なものを消費する状態へと移行してのだそうだ。日本人がブランドが好きな理由もその辺にあるんでしょう。それが更に進む「ネタ消費社会」になると、話しのネタになる個人的な体験に価値が置かれるため、より個性的な嗜好や体験に重きが置かれるようになるという。

 雑誌連載をまとめたものなので、前半のトピックのバラツキに違和感を覚えたが、最後のネタ消費の話しにつなげていく辺りは見事。番組の終わりにいつも気の利いた言葉で締めくくってくれるのと同じセンスを感じます。 

 

カーニヴァル化する社会
カーニヴァル化する社会

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鈴木 謙介
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5 毎日をカーニバルにしたい。
5 今後の著作に期待
5 監視社会