【読書】キーボード配列QWERTYの謎

 いま私がこうして毎日打っているキーボードの配列。アルファベット順でも50音順でもなく、始めて触る人にはどこにキーがあるか分かりにくい配列になっている。一般的なアルファベットの配列はTabキーの横のキーの並びを読んで「QWERTY」というのだが、この配列が今日の標準として採用されるまでの歴史を書き記したのが、この本「キーボード配列QWERTYの謎」である。

 一般にQWERTY配列が出来た理由として、初期のタイプライターの印字アームが絡まらないように、わざと覚えにくくして打鍵のスピードが挙がらないようにしていると言われている。しかし、これはまったくのガセネタなのだそうだ。何故なら、QWERTY配列が出来た頃のタイプライターにはアームが無かったのだから・・・。じゃ、なんで最初に作った人はこの配列にしたのだろう? 私が本当に知りたかったQWERTY配列の誕生の秘密は、最後まで謎のままだった。

 初期のタイプライターから綿々と続くQWERTY配列は、その後人間工学的に“正しい”いくつもの新配列が登場するものの、新しい配列を覚えるのが面倒!や設備の入れ替えが大変などの理由で、乗り換えが起きるほどのインパクトがなく、現代に至る。

 誕生の秘密を残しながら、QWERTY配列のキーボードは今後も使われていくのだろう。 謎は謎のままが美しいのだ…。

キーボード配列QWERTYの謎
キーボード配列QWERTYの謎

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【イベント】フォーラム障害者とICT

 25日、杉並で行われた「フォーラム障害者とICT」というイベントに参加してきた。1998年から不定期に行われていたパソコンボランティアカンファレンスの後を受けるこのイベントには、全国から100名以上が集まりました。

 日時=2008年5月25日(日) 前夜祭=5月24日(土)
 会場=東京・セシオン杉並
 主催=日本障害者協議会

 過去のパソボラカンファレンスにも、何度か参加してきたが、久しぶりとなったこの回は感慨深いですね。午後のパネルディスカッションでは、畠山先生の講演を聞くことができて、原点を思い出すことができました。振り返れば、この道に入ったのも先生が出演されたNHKのドキュメンタリーを見たのがキッカケです。最初に就職した会社から今の会社に転職するときに、初めてお会いすることができ、背中を押してくれたことを今でも鮮明に覚えています。

ICT2008バナー

【読書】最重度・重複障害児かなこちゃんの暮らし―地域で、普通学級で生きるということ

 時折、障害のある人を取材して、記事を書くという仕事をしている。今回は大阪に出張して話しを伺ってきた。有ってきたのは北村佳那子ちゃん。重度の障害を持っているが、持ち前の頑張りと周りのサポートで、高校を卒業し、現在は大学進学を目指している。 とかく障害のある人の話をまとめると、涙っぽい話しになりがちだが、かなこちゃんを支えるメンバー達が、とにかく明るくて、なんだかこっちまで元気をもらっちゃったような気分に。おかげで記事もとてもポジティブな内容に書くことができた。

 原稿を書くのに参考にした、こちらの写真集もお勧め。

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【記事】マレーシア政府が障害者の雇用促進へ 、公務員の比率1%に

マレーシア政府が障害者の雇用促進へ 、公務員の比率1%に | マレーシア発ニュース速報 | マレーシアナビ!

【プトラジャヤ】 政府は、公務員の数に占める障害者の比率を最低でも1%まで拡大する方針だ。現在400人程度しか採用していない障害者を25倍(約1万人)程度まで増やす。
公務員の数は現在120万人強。障害者で専門職や管理職に就いている人材はほんのわずかで、大半がアシスタントや電話交換などの一般職だ。公共サービス局(PSD)のイスマイル・アダム局長は声明で、「2020年までに福祉社会を築くための計画の一環。志願者は直接インターネット経由で、連邦および州政府、国家機関、地方自治体などに応募できる」とし、あらゆる職種へ障害者登用を推進する姿勢を明らかにした。

 マレーシアにはまだ行ったことがないが、東南アジアの障害者雇用は、まだまだこれからだね。アジア太平洋の障害者に関しては琵琶湖フレームワークの中で行動計画が提示されている。

【読書】反社会学講座

 ちょっと「社会学」でも囓ってみるか、と思ってWebを検索。行き着いたページがここ「スタンダード 反社会学講座」。 そもそも社会学って扱う幅が広くて、素人には何をやってるかよく分からないじゃないですか。だからこれまでちょっと斜に構えてみていたので、本書のタイトルに強く惹かれたのかも。社会学が何かも分かっていないのに、いきなり「反社会学」なんて、と思ったけれど読み始めると面白くて堪らない。随所にちりばめられた毒がピリリと効いて小気味よい。

 一番気に入ったのは、社会学者の一般的な研究方法についてのくだり。ちょっと長いけど引用してみる。

  1. 日常生活の中や、新聞・雑誌・テレビの報道などから、気にくわない人間、こてんぱんにやっつけてやりたい憎たらしい相手を見つけ出します。これは、個人的な感情に基づいたものでかまいません。
  2. その批判対象となる人たちが、なぜ気にくわないのか。落ち着いた雰囲気の喫茶店で(ドトールや、とりわけスタバは、アホ女子大生の巣窟なので適しません)コーヒーでも飲みながら、結論を出します。これももちろん、個人的な感情論で結構です。理系の学問ではこの段階の意見を仮説と呼びますが、社会学にかぎっては、仮説と結論は同義です。 
  3. 資料やデータを収集します。このとき注意しなければならないのは、自分の結論を裏づけるのに都合のいい証拠だけを集めるということです。高いコーヒー代を払ってせっかく練り上げた結論なのですから、大切にしましょう。それを否定するような資料やデータは見て見ぬふりをします。 
  4. なお、データの一部分だけを抽出したり、意図的に資料を誤読したりするのは、社会学研究上での重要なテクニックですので、日々研鑽に励まねばなりません。統計学の手法を用い、重回帰分析などのテクニックを使用するのも有効です。学力低下のおかげで、算数の不得意な人が増えたので、たやすく煙に巻くことができます。
  5. 手頃なデータが手に入らないときは、海外に目を向けるのも大切です。「アメリカでは……」「イギリスでは……」と具体例を引くことで、日本人の西洋コンプレックスを上手く利用しましょう。ただし、日本より劣る点には、目をつぶらねばなりません。「イギリス人はみんな立派で、日本人のようにふにゃふにゃしていない」これは結構です。でも、「イギリス貴族はみんなホモ」「イギリスの若者はみんな失業中で薬物中毒」などの具体例は(たとえそれが公然の秘密であっても)逆効果です。
  6. データをもとに本を書きます。論文ではなく、本です。論文を読むのはごく一部の物好きだけです。近年の創刊ラッシュにより、新書なら比較的楽に出せます。ハードカバーでなきゃ、というプライドは捨てましょう。そして、この段階で、個人的な恨みつらみの要素は取り除かねばなりません。ひねり出して磨き上げた個人的な結論を、一般的な社会問題にすり替えて大袈裟に煽り立てましょう。 
  7. マスコミの注目を集め、取材や原稿、講演の依頼が殺到します。ちなみに講演のギャラは、一回90?120分で50万円が相場です。555,555円にしておけば、税引後ぴったり50万円が手元に残ります。

反社会学講座 第1回 なぜ社会学はだめなのか  より引用、例:は抜いてある。

  これだけ読んでも、強烈な皮肉が伝わってくるでしょう? こんなふうに描かれただろうと思われる新書や報告書がたくさん頭に思い浮かびます。すべてこの調子で書かれた20回の誌上講義をまとめた文庫本として発売されている。加筆されているので、読み応えありますよ。

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5 とにかく面白い
4 毒ありました♪
4 反社会学は結局、社会学に回収される。
5 社会がわかる
5 「なんとなく」議論を打破する一冊

 しかし「社会学者の一般的な研究方法」には気を付けなければならない。もしかして自分もこのパターンで文章を書いていないか!? 特にデータの取り扱いは慎重にしないとゴミがゴミを生み出すことになってしまう。今から昔の文章を読み返すなんて恐ろしいことは出来ないが、これからは適当な仮説やいい加減なデータの引用が無いように気を付けよう。以前読んだ「社会調査」のウソにも、その辺の注意がしっかり書かれていたなぁ。こっちも復習しておこう。

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5 勉強になります
3 数字の見方が変わります
5 過激ながら良識ある批判
5 世の中の調査やアンケートがゴミ情報だらけであることが解る
3 いいけどちょっとあやしいところも