【読書】定年後のただならぬオジサン

 ただならぬオジサンとは、「さすが年をとっているだけのことはある」と世の中に認められて、一目置かれる存在として、定年後を生きている人を指すのだそうだ。確かに登場するオジサン達はただならぬ人ばかり。ただならぬだけではなく、生き生きとして楽しそう。まさにアクティブシニアだ。

 日本の高度成長期を支えたオジサン達は、仕事のために生きてきたような人生を過ごしてきた。だから定年になって仕事から離れると何をしていいか分からなくなってしまう人もいる。本書に登場するオジサン達は、定年後の人生に新たな生きがいを見いだし、第二の人生を豊かに過ごしている。その豊かさは金銭的なものだけではなく、仲間や友人、地域との繋がりの中で、自分の存在を肯定してくれる誰かと関わりながら、生きていることを実感していく豊かさのことだ。

 ちょう私の両親が、そろそろ本書に登場するオジサン達の仲間に入る年齢である。自分の親を思いながら読むと、更にいろいろと考えさせられる本だ。

定年後のただならぬオジサン (中公新書ラクレ)
足立 紀尚
中央公論新社
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おすすめ度の平均: 5.0

5 60代からの生き方がイメージできた。
5 シニアの生き甲斐とは

【読書】日本再生のルール・ブック

  タイトルからして政治に関する本のように見えるけれど、スウェーデンのNGO団体である「ナチュラル・ステップ」が取り組む、持続可能な社会を解説した本です。マスコミで取り上げられる環境問題が、時に感情論に流されがちなことに対して、この団体は科学的な視点が一貫していて納得できる点が多いです。

 将来の社会のあるべき姿を想像するときに、炭素消費量や有害物質の拡散量など、環境問題は問題の影響力を数値で可視化できる点が優れていますね。ユニバーサルデザインの与える経済的なメリットなど、我々も将来の社会に与える影響を可視化する努力が必要だと感じました。

日本再生のルール・ブック―ナチュラル・ステップと持続可能な社会 (海象ブックレット)
高見 幸子
海象社
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5 秀逸です

【読書】「未来の学び」をデザインする―空間・活動・共同体

 これまでの知識重視の学びから、体験やコミュニケーションを中心にした新しい学びについて、MITのメディアラボやはこだて未来大学での実践を紹介。

 非常に参考になりました。学びの環境とは大学のような教育機関だけではなく、企業にも必要なもの。特に研究や開発、デザインなどの新しいものを生み出す仕事では常に学びが伴うので、そのような環境を整備するためには、仕事の進め方自体を見直していく必要があります。

 特にユニバーサルデザインは、参加型のデザインであるとも言われるので、この本で取り上げられている空間・活動・共同体などを考えることは重要な要素でしょう。

「未来の学び」をデザインする―空間・活動・共同体
美馬 のゆり 山内 祐平
東京大学出版会
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【読書】桜の文学史

  この季節、日本に生まれてよかったと思うのが桜の花が見られることだ。桜が、なぜこれ程までに日本人の心を捉えて離さないのだろう。満開の桜の木の下を風が駆け抜けると、ひらひらと舞い落ちる花びら。それだけでこころは千々に乱れる。侍の心に例えられたり、軍国主義の象徴にされたりと少々物騒な花でもあるが、それも人の心を動かす魅力のせいか。

 ちょうど高校生の頃に、桜のことをもっと知りたくなって買い求めたのが「桜の文学史」。いまは新書で再版されているが、その頃は文庫版だった。この本は遙か万葉の時代から、文学の中に織り込まれた日本人と桜との心根を説き明かしています。江戸時代以降に広まった桜の散る様に死生観を重ねる文化が、極一時的なものだというのも分かります。

 理系の大学に入ってから一般教養で取った文学のクラスで教鞭を執られていたのが、この本の著者の小川先生でした。授業の教科書もこの本が使われていて、以前から本書を読んでいた私は、毎回の授業を本当に楽しみにしていました。著者に直接教えてもらえるなんてなかなかない幸運。

 あぁ、それにしても、今年も桜が散っていく。

桜の文学史 (文春新書)
桜の文学史 (文春新書)

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小川 和佑
文藝春秋 (2004/02/22)
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おすすめ度の平均: 5.0

5 年間を通して楽しめる桜の本

【漫画】ファンタジウム

 雑誌モーニング2に連載中のマンガ、「ファンタジウム」。

 主人公の長見良は13歳の男の子。天才的なマジックの腕前を示す彼は、ディスレキシアのために中学を不登校に。周囲の無理解から孤独を募らせていた彼は、師匠だった北條龍五郎の孫の英明との出会いで、プロのマジシャンを目指していく。

 マジックもディスレキシアも丁寧に描かれていて、大人びてはいるがまだまだ少年らしさを残す主人公の心の内が鮮やかにでています。お勧め。

 たぶん、マンガの主人公にディスレキシアが登場するのは初めてではないでしょうか? マンガなので極端な部分もありますが、ちゃんと取材もされているので、押えるところはちゃんと押えています。

ファンタジウム 1 (1) (モーニングKC)
杉本 亜未
講談社
おすすめ度の平均: 5.0

5 共感を持てる主人公二人が面白くてかわいい
5 ものすごく続きが読みたくなる
5 『独裁者グラナダ』の
5 くりかえし読みたくなる
5 マジックシーンがすごい

ファンタジウム 2 (2) (モーニングKC)
杉本 亜未
講談社
おすすめ度の平均: 5.0

5 さまざまな要素がまとまっていく手品のような素晴らしさ
5 久しぶりに良いマンガを読んだ