【読書】貧困の終焉

 夏休みなので少し世界の問題について考えてみるために、ジェフリー・サックスの「貧困の終焉」を読んでみた。著者は元ハーバード大学経済学部の教授で、国連ミレニアムプロジェクトのリーダー。

 本書の導入部では、著者が最貧困国の経済立て直しに関わるまでが描かれているが、世界銀行や各国首脳を相手に開発のメリットを説いて大立ち回りをするのだが、これがスリリングで面白い。 半自伝的な前半の中で徐々に形を表してきた「臨床経済学」の考えを、後半はミレニアムプロジェクトという世界的なプロジェクトへと結実させていく。

 構造的に引き起こされた”極度の貧困”は途上国の怠惰で起こるという誤解を解き、それらを解消して、「持続的な開発」の最初の一歩を踏み出すためには先進国の援助が不可欠である。そのコストは先進国のGNPの0.7%に過ぎないこと。そしてテロなどを防ぐための予防戦争に比べれば、遙かにコストが低くメリットが高いことを具体的に示している。これからの開発の方向性を明確に示している本書は、国際的な援助を考える上で重要な指針となるだろう。

貧困の終焉―2025年までに世界を変える
ジェフリー サックス Jeffrey D. Sachs 鈴木 主税 野中 邦子
早川書房 (2006/04)