【読書】オランダを知る本

 カンファレンス参加と現地調査を兼ねて毎年海外に行くのだけれど、今年はオランダに行くことになりました。早速、現地の情報を仕入れるために、まずは文献調査。

 今回は地域情報化やスマートホームをテーマに調査に行くため、オランダの社会の仕組みを知る事から始めます。そこで手にしたのが、「オランダモデル」と「オランダを知るための60章」。とちらも同じ著者による本です。

 これまで知らなかったのですが、オランダは非常に進んだ社会モデルを持っており、小国ながら存在感のある国であることが分かります。特にワーキングシェアの制度は、成立前の状況が日本とよく似ているので、日本にも取り入れて欲しいですね。 

オランダモデル―制度疲労なき成熟社会
長坂 寿久
日本経済新聞社 (2000/04)
売り上げランキング: 4278
オランダを知るための60章
長坂 寿久
明石書店 (2007/04)
売り上げランキング: 17069

【読書】ブレイン-マシン・インタフェース最前線―脳と機械をむすぶ革新技術

 脳とコンピューターを接続するブレイン-マシン・インターフェースにの状況についてまとめた本。将来的には再バーグ技術へとつながっていくのだろうけれど、現時点での対象者は主に障害をもつ人への適用である。

 視覚を失った人に対しての人工網膜や、腕を失った人への電動義手など、脳への電子的な情報の入出力を可能にするブレイン-マシン・インターフェースは、既に人工内耳のように実用化されている技術も多く、今後も発展が期待されている。日本国内でも、本書が示すように進んだ技術が多くあるのだが、倫理的な問題から臨床実験を行うことが難しいだろう。確か、人工内耳の研究の時にも、国内ではよい成果をあげていたが臨床実験が出来ずに、研究者が国外へ流出したと聞いたことがある。

 2,006年辺りから、この分野が実用的な研究としてクローズアップされており、アメリカやEUが力を入れてきているので、この辺で技術の全体像を知っておくには手頃な入門書になるだろう。

ブレイン-マシン・インタフェース最前線―脳と機械をむすぶ革新技術
櫻井 芳雄
工業調査会 (2007/06)
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【読書】わが指のオーケストラ

 「遙かなる甲子園」に続き、山本おさむの「わが指のオーケストラ」を読了。口話主義が台頭する日本の聾教育界の中で、ただ一つ手話を守った大阪市立聾唖学校の校長、高橋潔を主人公にしたマンガです。日本の聾教育の歴史がよく分かります。

 高橋潔の言葉で最も感動した場面は、彼の全国聾唖学校公聴会総会でのスピーチです。

「口話に適する者には口話法にて適しない者には手話法にて」
「ひとりの落ちこぼれもない教育…いわゆる適正教育を最もよしと信じるのであります!!」
第4巻P143より

 他の学校が口話教育に傾く中で、たった1人手話教育の重要性を訴える姿に感動しました。潔の考える適正教育は、いまのインクルージョン教育にも通じるものだと思います。

 しかし世間は口話教育を選び、その結果いまでも聾学校では口話教育が主流で、手話はあまり認められていないままです。口話が出来ると健聴者とのコミュニケーションは円滑になりますが、習得することはとても難しく誰もが身に付けられるものではないそうです。その結果、学校の授業が口話法を身に付けるために割かれてしまい、他の教科の勉強が遅れてしまうという問題があります。

 口話がいいか手話がいいか、答えは一つではありません。その人に適した教育が受けられるようにすることが大事なのだと、改めて感じました。

わが指のオーケストラ (3)
山本 おさむ
秋田書店 (2000/07)
売り上げランキング: 244993
おすすめ度の平均: 5.0

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